¡Hola!
スペイン文化の研究が大好きなChica.(@Chica_espana0)です!

今日のテーマは「スペインの大麻事情」
突然ですが、皆さんは「スペインでは大麻が合法らしい」という噂を聞いたことがありますか?
私はあります!(笑)
その噂通り、実際にスペイン滞在中何度も現地の人に「合法的に大麻吸ってみない?」と誘われたことも。(もちろん断りました)
今日は本当にスペインで大麻が合法なのか、実際どれくらいのスペイン人が大麻を使用しているのか、そもそもスペインで大麻が広がった歴史など、様々な角度から「スペインの大麻事情」を紹介していきます!
早速レッツゴー!!
大麻とは?

そもそも大麻とは?
まずは大前提となる大麻の定義を一緒におさらいしてみましょう。
大麻とは
そもそも大麻とは何でしょうか。
厚生労働省は、以下のように定めています。
大麻 とは、 大麻草(カンナビス・サティバ・エル)、 及びその 製品 をいいます 。
ただし、 大麻 草の成熟した 茎、 及びその 茎から作られる 繊維 等 の 製品 (樹脂を除きます。) と、 大麻 草 の種子 及びその 製品 は 規制対象 から除かれます。
引用元:厚生労働省
つまり、一般的に薬物としての大麻は、大麻草とその製品のことであって、衣類によく使われる繊維としての麻は別物として扱われています。
大麻は、世界中で最も多く乱用されている薬物。
国連薬物・犯罪事務所(UNODC)によれば、世界中で1億5千万人の大麻使用者がおり、世界人口の2.5%に当たるのだとか。
大麻の使用による健康への影響は、国や人によって意見が異なるのが現状ですが、WHO並びに国連の「麻薬単一条約」に加盟する多くの国々が大麻の使用による健康被害を訴えています。
この背景から、日本政府もスペイン政府も「大麻の使用により、めまい、嘔吐、平衡感覚障害、錯乱、極度の不安・恐怖、依存などを引き起こす」と主張し、使用を原則禁止する立場をとっています。
大麻とスペイン人
スペイン人はどれ位大麻を使用しているの?
様々な機関から興味深いデータを集めてみました。
スペイン全体の消費量

正直なところ、正確な消費量なんて誰もわからないのが大麻の世界…。
しかしABC.esによると、スペイン人の約35%が「これまで大麻を使ったことがある」と回答。
厚生労働省発表の日本人の生涯大麻使用率は1.4%なので、単純に考えてもかなりの量の大麻がスペインで消費されていることが分かります。
さらにEl Españolの報道によると、15歳から34歳のスペイン人の大麻の使用率は18,3%。
なんとこれはヨーロッパの中でも3番目に高い水準で、あのオランダよりも多いのです!
(アムステルダムの方が大麻系のお土産物屋さんが多く、町中で匂いが立ち込めていたので意外でした)
ヨーロッパの中で見てもスペイン人にとって、大麻はとても身近な存在であることがわかります。
スペインで大麻が人気の理由
どうしてスペインではこれほど大麻が人気なのでしょうか。
調べてみたところ、「価格の安さ」「地理的影響」「歴史的影響」の3つの理由が挙げられそうです。
1.価格が安い
日本での大麻の末端価格は世界で一番高いとも言われており、1g約6000円(※1)で取引されています。
一方、スペインでは1g 6~7ユーロ(※2)と、日本の約10分の1の価格で流通しています。
スペインでの価格が低い理由として、「個人的な使用」に限り自宅での栽培が合法的に可能であり(後ほど詳しく紹介します)、誰でも簡単に製造・販売の機会が得られることなどが挙げられます。
2.地理的影響

スペインのジブラルタル海峡を挟んだ対岸にある、アフリカ大陸の国モロッコはhachís(ペースト状の大麻)の生産地。
もともとスペインに大麻が伝わったのもモロッコからだと言われていますが、その影響は現在でも続いています。
現在でもジブラルタル海峡を通して大量の大麻がスペインに輸入され、ヨーロッパ中に広まっていることから、スペインは「ヨーロッパの大麻の入り口」と呼ばれています。
3.歴史的影響
世界的にみて大麻の起源は古く、紀元前2737年頃の中国の医学文献に最古の記録が残っています。
その後アジア大陸からアフリカ大陸を経由し、西暦800年頃モロッコからスペインへと渡りました。
それまではアジア・アフリカ大陸を中心に繊維、食糧、薬用等に使われていましたが、1150年頃、イスラム教徒が紙を生産するためにスペインに麻を導入し、最初の工場がアリカンテ市に設立されました。
その後コロンブス等によってラテンアメリカに大麻が伝わったのは16世紀のこと。
19世紀から20世紀にはメキシコで大麻が大量に生産され、北米に輸出され始めます。
大麻の流入とアメリカドルの流出による経済的悪影響を恐れたアメリカ政府は、1930年代初頭に反大麻キャンペーンと大麻の違法化を実施。

北米が自国の秩序・経済を守るために大麻を違法化したこと、メキシコ革命の中で大麻の乱用が大流行したこと、第二次世界大戦後、北米の反大麻政策が世界中に広まったことなどが原因で、現在の大麻に対するネガティブなステレオタイプが出来たと言われています。
1960年代に世界中でヒッピーブームが起き、若者の間で大麻が流行る中、スペインも例外ではなくマドリードやバルセロナなどで大麻の闇取引が盛んに行われました。
1974年、スペインの最高裁は「個人的な使用」に限り大麻を合法化すると発表、ヨーロッパではじめて(部分的ではありますが)大麻の非犯罪化(合法化)に成功した国となります。
その流れで1990年代には合法的に大麻を売買できる場所として大麻クラブが誕生し、現在でも大麻ユーザーの交流の場として活用されています。

スペインは歴史的にも大麻と共存してきた国なんだね!
スペインで大麻は合法?
スペインで大麻は合法か違法か。
一般的に、「大麻自体は違法薬物だが、個人的な使用の範囲内なら合法」と表現されています。
スペインの刑法(el Código Penal)
具体的にはスペインの刑法(el Código Penal)により、以下のように定められています。
大麻の摂取
個人的な使用なら合法。
公共の場で使用した場合は罰金が科せられる。
大麻の栽培
個人的な使用の為なら合法。
(ちまたでは2株程度ならセーフと言われている)
大麻の所持
100gまでは所持可能。
それ以上は違法。
大麻の販売
違法。しかしclubes canábicos(大麻クラブ)での販売は合法。
大麻の輸送
違法だが、個人の範囲内なら罰則はなし。
大麻の種子の販売
合法
ややこしい!!!
あまりにもルールが複雑で曖昧なので、ネイティブでもきちんと把握している人は少ないでしょう。
しかも「個人的な使用ならOK」という割には、100gの所持って結構な量ですよね。
もし日本で100gも所持していて見つかったら、初犯であれば2年から3年の懲役刑、3年から4年の執行猶予判決になります(※3)。
スペイン人にそのことを伝えてみたところ、「さすがに100gも持っていたらスペインでもアウトだよ」とのコメントを貰いました。人それぞれ見解があるようです。
スペイン政府の見解
結局肝心なところが曖昧で、違法なのか合法なのかよくわからない!
そんな時には政府機関のホームページを見てみるに限る!!
スペイン保健省の公式ページでは大麻に対して以下のように明記されていました。
大麻は、乾燥大麻、ハシシ(ペースト状の大麻)、CBDオイル(大麻から精製される油)など、形状によらず違法な薬物である
引用元:スペイン保健省
以上!!!
個人的な使用による例外についての言及は一切なし。
政府としては、「大麻=違法」というスタンスを貫きたいようです。
警察も大麻に関しては基本反対の立場なので、路上で吸っていたり、ベランダで栽培しているのがばれると普通に罰金を取られます。

実際、私の知り合いで検挙された人もいるよ
大麻クラブとは?

先ほど「スペインで唯一合法的な大麻の販売場所」として紹介した「clubes canábicos(大麻クラブ)」
「asociación cannábica」とも呼ばれますが、一体どんな場所なのでしょうか。
スペインの大手新聞社El Paísは、大麻クラブを以下のように定義しています。
Es una entidad sin ánimo de lucro, donde se consume marihuana compartida con fines terapéuticos o lúdicos entre sus socios, de forma compartida, que pagan una cuota mensual.
引用元:El País
つまり、大麻クラブは非営利団体であり、月謝を払った会員がセラピーまたは娯楽の目的で大麻を楽しむ場所だということです。
もちろん合法的なクラブとして運営するには、自治体へ届け出を出したうえで、換気・防音設備や営業時間など細かい条件を満たす必要があります。
これらのクラブは一般的に会員制であり、既に会員となっている人から紹介してもらうか、ホームページから申込フォームを送ることで入会することが出来ます。

つまり、「安心かつ合法的に」大麻を使えるコミュニティ
大麻クラブの大麻はどこから来るのか
では、肝心な大麻は誰がどこから持ってくるのでしょうか。
実は大麻クラブの「運営者」は大麻を栽培することが出来ません。
実際に大麻を栽培し、クラブに持ってくるのは「会員」たちです。
ここで一つ疑問なのは、この場合の大麻の栽培や輸送は「個人的な使用」の範囲内なのか?ということ。
百歩譲ってOKだとしても、たった2株程度の大麻で売買取引が出来るほどの量を収穫できるのか?
怪しい。どう考えても怪しい。
その謎を探るべく、私たちは合法大麻界の奥地、大麻クラブへと向かった…
実際の大麻クラブ
すみません、小心者の私は実際に足を運ぶことが出来ませんでした(笑)
お詫びの代わりに、実際にスペインに存在する大麻クラブを紹介します。
制度上、これらの場所は「合法」とされていますが、実際に足を運ぶ際はどうか自己責任でお願いします…!
ちなみにほとんどの大麻クラブで「スペインでの住所を持つこと、21歳以上であること、顔写真付きの身分証明書を持っていること」という条件があります。
The Friend’s House Club

所在地:マドリード(ソル)
スペインの中心、マドリードにある大麻クラブ。
ここでは特に映画、音楽、アート関係のイベントが多く、クリエイティブな人に人気です。
毎日12時~24時まで営業。
21歳以上であることを示す、写真付きの身分証明書が必要です。
Private Cannabis Club

所在地:バルセロナ
落ち着いた雰囲気の室内では、大麻だけでなくゲーム、プール、ダーツなどあらゆる娯楽が揃っています。
訪問する際は公式HPからの申請を忘れずに。
年齢による入場制限について明記されていませんが、21歳以上でなければ断られる可能性が高いです。
スペインのその他の薬物
さて、一通りスペインの大麻事情について紹介してきました。
日本よりもはるかに法的にも、文化的にも大麻に寛容なことが分かりましたね!
ここからは少し視点を変えて、スペイン国内のその他の薬物についてみて行きましょう。
スペインで一般的な薬物

保健省によると、スペインで最も一般的に消費されている薬物は大麻だと言われています。
また、国内のあらゆる薬物のうち、特に健康被害のリスクが低いとされるのも大麻です。
大麻以外の薬物だと主に以下のものがスペインで流通しています。
コカイン(cocaína)
コカの木から抽出される無色無臭の柱状結晶。
世界的にみてもスペイン人の消費率は高い。
スペインでは1gあたり50~60ユーロで取引される(※)。
ヘロイン(heroína)
けしを原料とした薬物。
特に強い陶酔感と、精神的・身体的依存が感じられる。
エクスタシー(éxtasis)
日本ではMDMAと呼ばれ、化学的に合成される合成麻薬の一種。
スペインでは一粒3~16ユーロで取引される。
注意点は、これらの薬物は大麻と違い、かなり違法だということ!
スペインでは、大麻よりも依存性が高く健康上のリスクも高いとされ、万一製造、栽培、密輸などが発覚した場合は厳重に処罰されます。
また、公共の場で使用したり、違法に所持した場合は、対象の薬物の価値の数倍の罰金・最大18年の禁固刑が科せられる場合があり、これらの罪の重さは大麻の違法使用の約1.5~2倍にあたります。
大麻が身近なスペイン人でさえも、これらの薬物を使ったことがある人は多くありません。
彼らにとって「大麻=よくある娯楽」「その他の薬物=さすがにヤバいやつ」という認識の模様。

スペインで大麻のノリで他の薬物をして見つかると大変なことになるよ
まあ合法であれ違法であれ、外国でよくわからないものを口にするのは本当に危険。
犯罪に巻き込まれないためにも、怪しいことには関わらないのが賢明です…!!
スペインでの大麻の現実
スペインには1年間の長期留学を含めて4回滞在したことがある私。
マドリード、アルカラ、バルセロナを拠点に生活し、北から南までスペイン中を旅しましたが、どこに行っても大麻の存在を感じました(笑)
特にアルカラは小さな町なので、いたるところで若者たちが集まって大麻を吸うのは当たり前。(特にアルカラ大学の図書館前)
私は吸ったことがないので、味や使用感は全く分からないのですが、匂いだけはどんな素人でもわかると思います。

ルームメイトが家で普通に吸っていたり、知り合いがベランダ栽培していたり、交差点で売人に遭遇したり、知らないうちに友人が吸わされていたり…
日本では一度も大麻を見たことがありませんが、スペインでは日常茶飯事。
しかし、警察も完全に野放しということではないので、見つかれば普通に罰金されます。
(スペイン人の知り合いによると、路上での使用やベランダ栽培がばれるだけで300ユーロの罰金が相場なんだとか。)
さらに、罰則の基準がかなり曖昧なので、「個人的な使用だから大丈夫でしょ」と思っていても、そうみなされないことも。
スペインは「大麻は基本違法」というスタンスなので、個人的には安易に手を出さないのがおすすめです。
まとめ
今日は「スペインの大麻事情」という、非常にディープな話題を掘り下げてみました。
スペインの法律的には「基本違法だけど、個人的な使用ならOK」というスタンス。
「大麻クラブ」という合法的に大麻を売買できる場所も数多く存在していますが、果たして本当に安全なのかは謎に包まれています。
個人的には、たとえ合法であっても「海外で知らない人から得体の知れないものを買わない・食べない」が大鉄則。
安全に楽しくスペインライフを楽しむためにも、怪しいものには近づかないようにしてくださいね!
ではでは、今日はここまで!
また会いましょう♪Chao!
※1朝日新聞、2cronicaglobal、3弁護士法人春田法律事務所参照元:eldiario.es, 20minutos, スペイン保健省、千葉県警、厚生労働省、El País, neurologia.com, El confidencial
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