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【ディズニー】「ハイホー」の歌詞翻訳に見るスペイン文化

¡Hola!

スペインが大好きなディズニーマニア、チカ(@Chica_espana0)です!

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今日のテーマは「白雪姫のハイホーの訳に見る異文化比較」


ちょっと難しい感じに聞こえるけど、要は「スペイン語版のハイホー」と「日本語版のハイホー」が全く違う!

調べてみたら、どちらもそれぞれの文化を色濃く反映していた!

しかもめっちゃ面白いから詳しく解説しちゃう!!!ということです(笑)

早速レッツゴー!!



目次

スペインと白雪姫

本題のハイホーの翻訳に入る前に、まずは白雪姫についておさらい!

意外と長い歴史を持つ白雪姫は、公開当時、世界中に衝撃を与えるほどの話題作でした。

白雪姫の生い立ち

ディズニーが世界で初めて製作した長編映画、「白雪姫」

アメリカで公開された1937年当時、多くの国々がまだ第一次世界大戦後の余韻の中。

この年スペインでは内戦の真っただ中で、フランコが各地で勢力を振い、ゲルニカではナチス軍が空爆を落としていました。

「映画と言えば6分ほどの短編で白黒」というこの時代。

82分の長編かつ美しいフルカラー」で実現された白雪姫は、重い雰囲気が漂う世の中に希望の光を照らす存在となりました。

映画館の入場料が数十セントというこの時代に150万ドル(現在の30億円)もの製作費をかけて作られたこの映画は、興行収入800万ドル(現在の160億円)を記録。

当時としては記録的な大ヒットで、第10回アカデミー賞を受賞しました。

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この時映画を模して、大きなオスカー像と小さな7人のオスカー像が贈られたんだよ


スペインと白雪姫

スペインで白雪姫が初めて公開されたのは1941年、真珠湾攻撃が起こる約1か月前のことでした。

スペイン内戦が終わり、第2次世界大戦にも参加していなかったスペインでは世界でも比較的早い年に公開され、大ヒットを記録しました。

リメイク版も合わせると、EU圏内だけでも今日までに185億円もの売り上げがあるとされている白雪姫。

幾度のリメイクの後、2009年にブルーレイ版が発売された時は、当時スペインで最も売れた映画となりました。

白雪姫のお城のモデルはスペインにある

ABC.es


スペインでこの映画が人気である理由の一つに、「白雪姫の王子様が住むお城」があります。

森の中の小屋で毒入りリンゴを食べて死んでしまった白雪姫は、王子様のキスで大復活。

そのまま彼に連れられ、豪華絢爛なお城でいつまでも幸せに暮らしましたとさ―

映画の中で頻繁に登場するこのお城、実はそのモデルはセゴビアの歴史的建造物「El Alcázar de Segovia」であると言われています。



確かに、その崖っぷちの立地と言い、円柱の塔に挟まれた四角い建物と言い、見た目はそっくり。

El Alcázar de Segoviaは1122年頃に砦として建造されたのち、王宮、監獄、軍事施設、博物館として利用されてきた由緒あるお城。

品格の高い外観も、歴史を感じる内装も、中から望む美しいセゴビアの景色も、非の打ち所がないほど素晴らしいです。

白雪姫の物語自体はドイツの寓話をモデルにしているにもかかわらず、あえてスペインのEl Alcázar de Segoviaを選びたくなる気持ちがよくわかる…

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お城の近くの街並みも、おとぎ話の中にいるみたいに可愛いんだよ



白雪姫の名曲「ハイホー」

さて、ようやく本題の「ハイホー」の訳に入りましょう。

スペイン語での映画の題名は

Blancanieves y los siete enanitos

直訳すると「白雪姫と7人の小人たち」となります。

「enanito」は日本語で「小人」

そう、あの名曲「ハイホー」を歌っている張本人たちです。

英語版の映画では、このようなシーンで歌われています。

鉱山で1日中働いた後、5時の定時の合図と同時に家路につく小人たち。

実は「ハイホー」は、「鉱物をいっぱい掘って定時になったら、さあ家に帰ろう」という終業の歌なのです。

英語版のサビの歌詞は、

…Heigh-ho, heigh-ho

It’s home from work we go…



日本語に訳すと、

ハイホー、ハイホー

仕事から家に帰ろう



となります。

英語版では、全てのサビがこの歌詞が繰り返されています。



スペイン語版ハイホーの特徴



一方、スペイン語版でのハイホー。

スペイン語版の公式動画では、少し前の白雪姫の歌唱シーンから始まります。

該当のサビの部分は、

…Hi – ho, Hi – ho

Ya es hora de cerrar…

…Hi – ho, Hi – ho

Nos vamos a cerrar…

…Hi – ho, Hi – ho

Marchemos al hogar…

… Hi – ho, Hi – ho

Nos vamos a cenar…



日本語に訳すと、

ハイホー、ハイホー

もう閉める時…

さあ閉めよう…

おうちに帰ろう…

さあ夜ご飯を食べよう…



となります。

英語版のサビが統一して同じ歌詞を繰り返している一方、スペイン語版では毎回違うフレーズが登場します。

どうして言語によってこのような違いがあるのでしょうか。

単語の繰り返しを嫌うスペイン語

これは他の言語に比べて、スペイン語は特に同じ単語を繰り返すことを嫌う性質が影響しているからだと思われます。

例えば、新聞などである有名コメディアンについて話すとき、スペイン語では「その人の名前」「彼」「その男」「コメディアン」「偉大な成功者」「ユーモアに富んだ芸術家」「色男」など、1段落の中で様々な呼び方が登場します。

これらは全て「名前」や「彼」を重複して使用するのを避けるため。

日本語にもこの傾向はある程度見られますが、スペイン語と比較するとかなり弱いです。

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スペイン語では同じ単語を繰り返すと聞き手にマイナスな印象を与えるとされているよ



一律でメキシコのスペイン語訳

スペイン語版ハイホーのもう一つの特徴として、「全スペイン語圏でメキシコ風のスペイン語訳が使われていた」という点があります。

今となっては「アナと雪の女王」にしかり、「リメンバーミー」にしかり、スペイン版とラテンアメリカ版で曲も含めて全く違う翻訳がされて公開されています。

しかし、白雪姫やピノキオなど、「クラシックディズニー」と呼ばれる古いディズニー映画では、一律してメキシコ風のスペイン語訳版のみ制作されていました。

例えばハイホーの歌詞の中の「Marchemos al hogar」という部分。

Marchar」は「帰る」と言う意味の動詞ですが、これはラテンアメリカでよく使われる単語です。(スペインでは一般的に「Volver」を使います)

こうなった理由は、当時のスペイン語版を担当する翻訳家がメキシコ出身のEdmundo Santos氏一人だけだったから。

なのでスペインに本部を置く「Disney Channel España」でさえも、古い作品については未だにラテンアメリカのスペイン語訳をスペイン国内向けに公開し続けているし、スペイン人たちも何故か子供のころから「外国風の」スペイン語ディズニーを聞きながら育ってきているのです。

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スペイン人的にはこの訳にとっても違和感を覚える(と同時に少し残念)みたい



作品によってはスペインのスペイン語版にリメイクされたものもあるものの、ファンの中には「昔のディズニー映画=ラテンアメリカ翻訳=オリジナル版」、「スペイン語版=母国の言語なのに改訂版」といった複雑な心境のスペイン人もいることでしょう。

ディズニーがやっと日本語版を出したと思ったら、正式なオリジナル版が関西弁、後々改訂版として標準語が来た、といった感じですかね…

(私のようなディズニーオタクからすると非常に複雑な状況…)

スペインの大手新聞社El Españolの記事で、クラシックディズニー映画のスペイン語翻訳が「Disney+(ディズニー映画専門の動画配信サイト)」にどのような影響を及ぼしているか少し触れているので、興味があれば読んでみてくださいね!



日本語版ハイホーの特徴

もうスペイン語版の説明だけでお腹いっぱいな気もするけど、一応日本語版の特徴も紹介します。

面白いので是非聞いてください(笑)

ずばり、オリジナル日本語版のサビではこのような歌詞になっています。

ハイホー、ハイホー

仕事が好き…

…ハイホー、ハイホー

仕事が好き…

…ハイホー、ハイホー

仕事が好き…



なぜだか日本語版だけ「仕事が好き」

英語も、スペイン語も、フランス語も、イタリア語も皆「家に帰る」と歌っているのに、なぜか日本語では仕事への讃美歌のようになっています。

本当にこれだけは意味が分からなかったのですが、この歌詞はオリジナル版のみで見られるということ、リメイク版では歌詞がより子供向けの楽しいものにすり替えられていることから、ディズニー的にもアウトな訳であったことが推測されます。

(現在では「仕事が好き」→「声を揃え」に変更されています)



確かに、定時の鐘が鳴り響いているのに「仕事が好き」と歌い狂う小人は恐怖以外の何者でもありません。

子供がそんな歌詞を聞いたら将来の雇用環境に不安を覚えることでしょう。

白雪姫の日本語オリジナル版が初めて日本で公開されたのは、アメリカやスペインよりも10年近く遅れた1950年のこと。

当時の日本は敗戦直後。

1955年頃からの高度経済成長に向け、人々ががむしゃらに働いていた時代でした。

だから、小人にも「仕事が好き」と言い聞かせていたのでしょうか。

ちなみに、歌詞が「声を揃え」に改定されたとされる2001年頃は、日本はバブル後の大不況の真っただ中。

数万人規模の大リストラが行われていた時期でした。

「仕事が好き」と言い聞かせるだけではやっていけない世の流れの中で、ひっそりと明るい歌詞に変更されたのでした。

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社会に合わせて訳も変わっていくんだね!



まとめ

白雪姫の名曲、ハイホーのスペイン語歌詞と日本語歌詞にみる文化の違いを比較してみました。

スペイン語版では、バリエーション豊富なサビの歌詞と、どの国でも一律でメキシコのスペイン語訳であったのが特徴的。

日本語版では、どういうわけか英語のオリジナルとは違う「仕事が好き」と言い聞かせる訳が印象的でした。

でも、そんな歌詞たちも、時代に合わせて少しずつ改定されています。

もしかしたら数年後は全く違う訳の改訂版が発表されるかもしれませんね。

これからもハイホーの歌詞、要チェックです!

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明るい未来を反映した楽しい訳が沢山出るといいなあ


このサイトでは、スペインの文化、スペイン語、留学、国際恋愛に関する情報を発信しています。

是非他の記事も読んでみてくださいね!

ではでは、また会いましょう、Chao!

参照元:El EspañolEl confidencialABC.esJOYSOUND、有馬哲夫『ディズニーの魔法』新潮新書,2009年


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